HUB棚

「小出祐介×渋谷タワレコのこの棚×音楽×あなた」と銘打って、小出祐介がタワレコ渋谷店の1〜7F各フロアで展開し、ジャンル毎にオススメ作品を紹介。

月1回、Base Ball Bearのリリースに合わせ内容を更新していく連続企画。
当サイトでは、更新時に各フロアのHUB棚より1作品を掲載していきます。




8月


1F NEW RELEASE
筋肉少女帯「混ぜるな危険」
TVアニメ「うしおととら」OPテーマの筋少の新曲ですが、もうOPで『はい、勝ったー!』ってなりましたよね「うしおととら」!『ダラッダー!ダラッダー!』というリズムのサビのメロディーがかもす『アニメの主題歌感』ね!映像と合わせての【頭サビ→間奏(ここでタイトル!)→Aメロ】という流れも完璧!かなりそういう文脈を汲んで作られているんじゃないかと思いました。この曲が最高!となるように、この国では『メタル+アニソン』、最近は『メタル+アイドル』の親和性も証明されているわけですが、逆に、『メタル』の強度凄すぎじゃね?と最近よく思います。映画「スパイナル・タップ」や、漫画「デトロイト・メタル・シティ」、何だったら「メタリカ:真実の瞬間」でも感じる、『ハードロック/メタルの大仰さの、一周した格好良さと面白さ』って本当に強いですよね。シリアスもコミカルもがっつり飲み込んで、がっつり吐き出せるハードロックもメタルも最高。…で、アニメの話に戻りますけど、作画がまたすっげー良いんですよ!少年サンデーっぽくしてるでしょ?っていうくらい少年サンデーっぽい!90年代のアニメのあの感じをビシビシ感じております。キャストも豪華だし、3クール構成だし、“白面の者”との決戦までいくとかやばすぎ!と、いった感じで「混ぜるな危険」とは今後もお付き合いしていきたいと思います!

2F TOWER BOOKS
中村淳彦「崩壊する介護現場」
「名前のない女たち」シリーズで、企画女優(固定の芸名がなく、作品の企画によって名前が変わるAV女優)へのインタビューをしていた中村淳彦氏の作品。救われない彼女たちの話を聞き続けてきた中村氏は自身の精神的限界を感じ、「名前のない女たち」シリーズ最終章にて業界を離れ、介護の仕事に携わるようになった。が、しかし、飛び込んだ介護業界はAV業界以上に崩壊していた…。身近に要介護の人がいたことがないのもあって、介護福祉という仕事に“聖職”というイメージを持っていた僕は、正直、かなりの衝撃を受けた。全然笑えない。2000年、介護保険制度導入で介護が民間に解放され、介護がビジネスとなって以来、ひび割れは大きくなっていったそうだ。高まり続けていく需要に対しての慢性的な人手不足から始まり、人員を確保するための資格や雇用政策の立て続いた失敗、制度改正で給与が縮小されていくことによる職員の貧窮。加えて、はびこる『ポエム経営』(これについては「ワタミ・渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター」に詳しい。ワタミと介護の関係性が恐ろしい)。そして、現場では、高齢者虐待、サイコパスの採用とそれによって起きる人間関係の悪化、低賃金から起きる女性職員の売春や風俗務めやAV出演など、負の連鎖としか思えない事態になっている。この本を読んだ後、現在検討されている、『介護福祉士,保育士の資格一本化』、さらに、『高齢者介護・保育・障害者向け施設の一本化』制度のとんでもなさがわかると思う。是非、読んでいただきたい。

3F J-POP
浜田金吾「MUGSHOT」
『ムーン・レコード』という山下達郎さんのレーベルがありまして、現在は山下さんと竹内まりやさんのプライベートレーベルとなっているんですが、そこから昔出たアルバムです。参加ミュージシャンはもう「(胸のあたりで両手を小さくふりながら)わ〜みんないる〜!」って感じですね。笑 改めてこの人たちが時代を組み立てていったんだなぁと思います。サウンドもプレイもグルーヴも全曲最高みたいな入れ食い状態。Track 1,3,5,6の「ツボは全部押さえました〜」感、その間に交互に差し込まれるメロウな曲もめちゃ良いっす。アルバム全体としては若々しさや抜けの良さがあって、この感じこそシティ・ポップという風に僕は捉えております。そして、歌詞はひたすらにトレンディ!雨のハイウェイ、バックミラー、車、カクテル、海風、エアポート…と、このアイテムだけでドラマ撮れちゃいそうな風景が広がります。そんな時代背景も併せて楽しんでもらいたいポイント。

4F SOUNDTRACK
映画「マルサの女」「マルサの女2」オリジナルサウンドトラック
1987年・1988年公開の伊丹十三監督作品「マルサの女」「マルサの女2」は、一生好きな映画のひとつです。(というか、僕にとって、伊丹十三監督作品はどれも一生もの。)宮本信子さん演じる、国税局査察部の女性査察官・板倉亮子と、あの手この手で脱税する者たちとの戦いを描く作品。敵役に、「マルサの女」では、ラブホテル経営をするなかで客が領収書をもらわないことに目を付け、売り上げ除外で脱税する実業家を山崎努さん。「マルサの女2」では妻を教祖とした宗教法人を立ち上げ、教団をスケープゴートに脱税する地上げ屋を三國連太郎さんが演じます。「マルサの女」は相手が“実業家”クラス。人としての交流を深めるうちに、案件が解決に向かっていきいます。その“大人のやりとり”といいますか、静かなる心の鍔迫り合いがとてもトレンディでアーバンでアダルトなんですね。そんな大人のドラマを、本田俊之さんの音楽が高めていきます。あまりにも有名なTrack 1は勿論ですが、終盤に流れるTrack 10も、ラストシーンとその景色が思い出されて沁みてきます。本田さんといえば、ドラマ「古畑任三郎」の音楽も手がけていますが、伊丹十三監督の最後の作品「マルタイの女」の制作には三谷幸喜氏が初期段階から参加していました。古畑もマルサも共通して言えるのは、大人の心理戦のドラマです。音楽にもどこか交差している部分があるような気がします。(ちなみに、「古畑任三郎」犯人役の候補に、伊丹十三さんも、宮本信子さんも名前が挙っていたそうです。)そして、「マルサの女2」では相手の“悪”っぷりに、そして、“悪”という“機関(システム)”に、その奥行きに、亮子は唇を噛む事になります。彼女を嘲笑うかのような“悪”を思わせるTrack 6に『ぐぬぬ…』という気持ちになることでしょう。

5F ROCK/POP
The Police「Live!」
Disc 1は1979年11月のライブの模様。アルバム「Reggatta de Blanc」リリース直後の演奏を聴くことができます。若々しいライブですが、この頃パンクバンド的に紹介されていた彼らの来日公演を観た人に話を聞くと、唄も演奏も凄くて「全然パンクじゃないじゃねぇか!」と驚いたそうです。そして、Disc 2はラストアルバム「Synchronicity」のツアー、1983年11月のアトランタ公演の模様を収録。僕が特におすすめしたいのはこちら、Disc 2です。The Policeの解散理由は不仲と言われていますが、それでこんなに脂が乗った演奏できるのかよと恐ろしくなります。Disc 1の頃から4年後ですが、同じ曲でも演奏のニュアンスが全然変わっているのもわかります。熟成といったやつです。(ちなみに、婦警さんの格好をした女性コーラスが3人入っています。)で、実はThe Policeはライブによって結構ムラがあるバンドなんですね。他のライブ音源を聴いていただければわかりますが、その時期、というより、その日によって全然演奏が違います。加えて、なにせ3人編成で基本的に余計な音が入っておらず、隙間も多いサウンドですから、音の仕上げでもかなりニュアンスがかわってきます。それらのニュアンスの好みで『これは好き』『こっちが好き』があると思います。そんな感じで僕も色々と聴きましたが、この「Synchronicity」のあらゆる点で『高まり切ってる!』という感じがやっぱり好きです。ライブの直前にリリースされたアルバム「Synchronicity」の曲も、スタジオ版より演奏にハリがあります。そして併せて、こちらの映像版、元・10ccのゴドレイ&クレームによる監督作「The Police Synchronicity Concert」DVDもおすすめです。あらゆるライブ映像のなかでいちばん好きです。普通のライブ映像と違い、かなり編集が加えられていて、例えば「Message in a Bottle」では踊りまくっている女性客がカメラに抜かれるのですが、抜かれた彼女がアニメーションになっていったり。他にも、若い頃の映像がダブってくる曲や、アンビエントをすべて切ってスタジオ版のように聴こえる曲や、印象的なエフェクトがかかるときはPAの手元を映したりと、映像作品としてとても面白いものになっています。

6F J-HIPHOP
KOHH「MONOCHROME」「梔子」
いますごく勢いのあるKOHH氏。シンプルでソリッドなトラックに乗せた彼のラップは、声が良いのもあって、本当に言葉がハッキリと飛び込んできます。僕自身、いちばん最初は歌詞カードを見ずに音を聴いたのですが、歌詞カードが不必要なくらい言葉が聞こえてきたので驚きました。そんな第一印象の引力に引っ張られ、ソロ作品は勿論、フィーチャリング作品も聞き漁りました。歌詞はどれもわかりやすい言葉で書かれていますが(iPhoneで歌詞を書いているらしく〈「iPhone 5」〉、MVでもiPhoneを持って歌っていたりします)、わかりやすいだけではなく、表層的に聞こえさせつつ本質を感じさせる深い表現になっています。「MONOCHROME」Track 1では批評的キラーフックをかまし、自身の出生にも触れる私小説的な歌詞(「梔子」収録「Far Away」,ANARCHY「MOON CHILD feat.KOHH」)では、シリアスさのなかにもユーモアがあります。むしろそれが彼自身の経験値や哲学を浮き彫りにします。また、『ここまで直接的な…!』という、ものすっごい享楽的な歌詞(「梔子」収録「Hello Kitty」、DJ SOULJAH 「aaight ft. KOHH & MARIA(SIMI LAB)」など)が多いのも特徴じゃないかと思います。そんな自分を高田純次に例えていたり(「JUNJI TAKADA」)もするんですが、『一周まわった達観』だと捉えています。シリアスと享楽の距離が開けば開くほどそのコントラストに奥行きが感じられます。何より好きなのが、1stアルバム(リリース順では2ndアルバム)のタイトル、「梔子」。本名と梔子の黄色い花をかけ、自身の哲学から花言葉の『私は幸せ』をかけ、そして、『口無し』。ラッパーである彼が自ら『口無し』、深読みすれば『言わぬが花』と言う、その含蓄がたまらないです。ちなみに先日、発売されたばかりの「KOHH YELLOW T△PE 3」収録の「毎日だな」を、RHYMESTER 宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」で紹介していました。Kanye West「All Day」のビート・ジャックなんですが、ここに『毎日だな』という言葉を乗せるというセンスが本当に凄いです。全然文脈の違う例えで申し訳ないんですけど、「続・荒野の用心棒」の主題歌「ジャンゴ」を北島三郎さんがカヴァーした、「ジャンゴ〜さすらい〜」(三池崇史監督「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」主題歌)を初めて聴いた時の感動を思い出しました。『に、日本の曲になってる…!』みたいな。笑 和訳や日本語詞を乗せることはあっても、『日本のものですけど』感はなかなか出せるものじゃないという意味で、同じように感動しました。

7F 落語
古今亭志ん朝「古今亭志ん朝 1 お見立て 火焔太鼓-朝日名人会ライヴシリーズ 1」
「お見立て」は、花魁・喜瀬川と、彼女にガチ恋の杢兵衛、その間に挟まれた若い衆の喜助の話。杢兵衛がやってきたことを喜瀬川に告げる喜助。杢兵衛が嫌いで迷惑がっている喜瀬川は『危篤だと言っておいで』と。自分が嫌われていることに全く気付いていない杢兵衛は喜助から説明されても、『見舞いに行くべ』。それをまた喜瀬川に報告すると、今度は『〈お亡くなりになりました〉って言っておいで』。喜瀬川に言われた通り、涙ながらに杢兵衛に伝えると、さすがに信じた杢兵衛。今度は『墓参りに行くべ』と言い出します。  志ん朝が得意とした噺の一つ。あれこれ大雑把な言い訳を考える花魁・喜瀬川、なまりの強い田舎者丸出しな杢兵衛、喜瀬川に呆れながらも同業者としてちょっと同情し『仕方ねぇなぁ』となる喜助。性別も性格も違うこの三人の演じ分けがとても見事です。途中、喜瀬川が言い訳を考えるくだりがセリフの畳み掛けになっていて、その畳み掛けに喜助は『よくそんなの思い付くねぇ』と呆れるんですが、この緩急がめちゃ気持ちいいんですよね。後半の墓参りのくだり、喜助のすっとぼけがおかしくってたまらないです。 「火焔太鼓(かえんだいこ)」は、父・志ん生が現在の形へと完成させた噺。父のものだからと大切にし、また、志ん朝自身も得意とした噺でもあります。  古道具屋を営む甚兵衛は呑気な上に正直で、客が呆れるほど商売下手。いつも妻に怒られてばかり。ある日、甚兵衛は古くて汚い太鼓を仕入れてくると、『まーた売れそうにないもの買ってきて!』と怒られ、ムキなって『売れるよ!』と、丁稚の定吉にハタキをかけろと言う。ハタキをはたいているうちに音が鳴り、楽しくなった定吉はドンドンと音を鳴らす。すると、店に一人の侍がやってきて、たまたま通りかかった主である大名が音を聞き、太鼓の実物を見てみたいと言っていると伝えられる。妻に『どうせ売れやしないんだから、元値で売っちゃいな』なんて言われつつ、大名の屋敷へ太鼓を持っていく甚兵衛。とんとんと商談は進み、古く汚い太鼓はなんと…。  志ん生の手によって、いわゆる“くすぐり”がてんこもりになったこの噺。甚兵衛と妻の掛け合い、甚兵衛の大名屋敷での商談のくだりが、まぁーー面白いこと面白いこと。見たこともない大金を前にした甚兵衛と妻のリアクションが大好きです。全体的にポップでアップテンポなわかりやすい噺なので、落語が初めての方でもスッと入っていけるでしょう。